2011年5月17日火曜日

冠詞ってむずかしいーーー「a」と「the」の違い

I am the researcherと名乗るとき






冠詞って何年やってもむずかしい。
どこで「the」を使い、どこで「a」を使うのか?
考えれば考えるほど混乱してしまう。
なんて思っている方も多いのではないでしょうか。

そこで、きょうは冠詞について、ちょっと考えてみました。

ふつう研究者が「あなたの職業は?」と聞かれたら、「I am a researcher.(私は研究者です)」と答えると思います。

では、いったいどんな時に「I am the researcher.」と「the」を使うのでしょう?

これはある日本人の先生から最近うかがった実話です。

その先生が若いころ外国で学会に参加されたとき、偶然有名な外国の先生方お二人とご一緒に車で会場に行くことになりました。

若い彼は助手席に、年配のお二人は後部座席に。

車が出発すると、後ろのお二人は何とその先生が最近発表した論文の話を始めたのでした。

A先生「この著者を知っている?」

B先生「いや、知らない、まだ若い人みたいだね。」

という話を聞いていた彼は、おもむろに後ろを振り返り、「I am the researcher.」(私がその研究者です)とおっしゃったとか。

いえ、礼儀正しいあの先生のことですから、ちゃんと車を降りてから丁寧にご挨拶なさったことと思うのですが、「I am the researcher.」というフレーズはまさにそういう場面にこそ、ぴったりなのです。

ひと言で言えば「a」とあるときは日本語の「ある」(または「一つの」)、「the」がつくと日本語では「その」。

上の日本語の文章をもう一度見てみてください。

「これはある日本人の先生から最近うかがった実話です。」
この「ある日本人の先生」を英訳すれば「 a Japanese professor」と「a」がつきます。次の行の
「その先生が若いころ外国で学会に参加されたとき、・・・」
この「その先生」は訳せば「the professor」

ですから、aは日本語の「ある」、the は「その」に相当するわけです。
こう書いて行くと実は冠詞ってとても簡単なように思えると思うのですが、何故それがときに難しくなってしまうかというと、日本語の場合かならずしも「ある」と「その」をつける必要はない。前後関係で意味がわかるのであれば、単に「先生」と書くこともできる。でも、英語では必ず冠詞が必要なのです。ですから、日本人にとって冠詞は永遠の課題、と言うのは言い過ぎで、単に「慣れてない」だけのことだと思うのです。

これから英文を読んだり書いたりするときに、ちょっと冠詞に気を配るようにしていくと、冠詞って意外とやさしい、って思えるようになるかもしれません。

Temperature(温度)に冠詞はつくの?

科学英語の特徴---抽象名詞が普通名詞に変わる!


温度や圧力など、物質の性質を示す名詞は抽象名詞といって、ふつうは冠詞がつきません。例えば、「一般に化学反応の速度は温度の上昇につれて増加する」は
「The speed of chemical reactions in general increases with an increase in temperature.」となり、ここで temperature は無冠詞です。
ところで、「水は他の液体よりも高い温度で沸騰する」という文章は
「Water boils at a higher temperature than other liquids.」となり、temperature には不定冠詞の a がついています。
これは、温度という抽象的な概念を示す抽象名詞だったtemperatureがある一つの数値としての温度(例えば100℃とか、37℃とか)を表す普通名詞に変わったからなのです。

では、次の例はどうでしょうか?
A thermodynamic diagram with temperature as abscissa and pressure as ordinate.(温度を横軸に、圧力を縦軸にとった熱力学線図)
ここではtemperatureは圧力(pressure)と同様に、温度という抽象的な概念を表す抽象名詞なので無冠詞です。

もう一つ例をあげましょう。
Some precipitates lose water readily in an oven at temperatures of 110℃ to 130℃. (沈殿の中には110℃〜130℃の温度の乾燥器中で簡単に脱水するものもある。)この場合temperaturesは110℃〜130℃の間にある複数の温度の値(例えば110℃, 111℃,112℃,113℃など)を指しており、普通名詞になっているのです。

では、次に定冠詞をとる場合をあげておきます。
The boiling temperature of water is 100℃.(水の沸点は100℃である。)
単に沸点と言っただけではいくつもあるのですが、水の沸点と限定されるとただ一つに決まる。ただ一つしかないものには定冠詞の「the」がつくわけですね。

その他、覚えておきたい例として室温のroom temperatureがあります。
これは無冠詞で、RTなどと略されることあります。