2012年1月17日火曜日

動詞が形容詞として使われるとき

コンパクトでクリアーな文章が好まれる科学英語では、関係代名詞を用いずに、動詞が分詞の形で名詞を修飾することが多々あります。

とくに一文が長くなる傾向がある論文では多用されています。

A series of nickel(II) complexes comprising N,N,N',N'-tetramethylethylenediamine (tmen), benzoylacetonate (bzac), and a halide anion (X), Ni(tmen)(bzac)Xn(H2O)(n=1~4, X= Cl, Br, I), have been synthesized.  

論文のアブストラクトの最初の1行ですが、comprisingという現在分詞により5文型中最も単純な第1文型(S + V)となっています。(関係代名詞を使うと複文になる)

つまり、主部は
A series of nickel(II) complexes comprising N,N,N',N'-tetramethylethylenediamine (tmen), benzoylacetonate (bzac), and a halide anion (X), Ni(tmen)(bzac)Xn(H2O)(n=1~4, X= Cl, Br, I),

述部は
have been synthesized.

(Publicationsの「論文ダウンロード」をクリックすると全文を見ることができます)

さて、それでは動詞を形容詞として使うときに注意するべき点は何でしょう?
それは現在分詞過去分詞のどちらを選ぶのか、ということです。
選択に迷ったときには、進行形受動態を作ってあてはめ、文意に合うかどうかを見てみましょう。

例えば 「酸化剤」というのは「酸化する」「剤」(薬)ということなので

An agent which is oxidizing. → An oxidizing agent となります。

逆に「酸化アルミニウム」というのは「酸化された」「アルミニウム」なので

Aluminum which is oxidized. → Oxidized aluminum となります。

それでは、生じた沈殿は英語にするとどうなりますか?

「生じる」に「result」や「occur」などの「自動詞」を用いると、

A precipitate which is resulting (occurring). → resulting (occurring) precipitate

一方、「生じる」に「produce」や「generate」などの「他動詞」を用いると、
A precipitate which is produced (generated). →produced (generated) precipitate

となります。

もう一つ、気をつけたいのは、過去分詞を置く位置。通常は名詞の後に置きますが、名詞の前に置くか、後に置くかで意味が変わることもあるのです。

それでは質問です。「使用した溶媒(solvent)」。次のどちらが正しい表現ですか?

1。 a used solvent
2。 a solvent used







正解は2。

1は「使用済みの溶媒」という意味になってしまいます。Used cars(中古車)が「使った車」という意味にならないのと同じです。

おまけのひとこと。
An oxidizing agent」は「An oxidation agent」と複合名詞でも表現できます。