2020年6月28日日曜日

複雑な長い文を読み解くためのコツ(その2)

複雑な長い文を読み解くためのコツ(その1)で、まずは動詞に注目する、と述べました。そこで大切になるのが「その文の述語となっている動詞を見抜く」ことです。

というのも、動詞は「~ing」や「~ed」の形で形容詞として名詞を修飾していることも多いからです。長い文の中にいくつもの動詞が出てきた場合は、まず動詞の形に注目し、形容詞として名詞を修飾している動詞と本来の動詞の働きをしている(述語となっている)動詞を区別しましょう。

例えば、次の文を見てみましょう。

Blossoms exposed to silence and high-frequency waves produced the baseline amount of sugar expected in their nectar.  

ここにはexposed, produced, expectedという3つの動詞が登場します。このうちのどれが形容詞になった動詞で、どれがこの文の述語なのでしょうか?

最初のexposedが述語だとすると、主語はBlossomsですが、Blossoms(S)exposed(V)は「花はさらした」となり、何をさらしたのか、目的語がないため、意味が通じません。つまり、ここは主語と述語の関係ではありません。

exposedは「さらされた」という意味の形容詞として前のblossomsを修飾しているのです。

Blossoms exposed to silence → Blossoms (which were) exposed to silence → 無音にさらされた花

次のproducedは述語です。その前のblossoms exposed to silence and high-frequency wavesが主部で、主語はblossoms。 目的語は sugar(さまざまな修飾語を省くと骨格は下記のようになります)

Blossoms ..............produced ......sugar (=花は糖を作り出した)

最後のexpectedが述語だとすると、主語はsugarになり、 sugar (S)expected (V)は「糖は期待した」となり、何を期待したのか、目的語がないため、やはり意味が通じません。つまり、ここも主語と動詞の関係ではなく、expectedは「期待される」という意味の形容詞としてその前のsugarを修飾しています。

sugar expected in their nectar→sugar (which was) expected in their nectar→蜜の中に期待される糖

ここでは動詞の過去分詞形「~ed」を例に解説しましたが、動詞の現在分詞形「~ing」でも同様です。その動詞は述語ではなく、前の名詞を修飾している形容詞ではないか?と考えてみることが大切です。



                         

複雑な長い文を読み解くためのコツ(その1)

情報を正確に(correct)、明瞭に(clear)、簡潔に(concise)伝えるのがモットーの科学英語では、同じ内容の情報を伝えることができるのであれば、文は短く、語数は少ないほうが望ましいのです。

ただし、科学英語では1概念を1文にまとめるため、1文が長くなる傾向があります。
長い文に戸惑ったときはまず動詞に注目しましょう。例えば次の文をご覧ください。

The rapid increase in the number of known organic compounds during the nineteenth century made the problem of keeping up with knowledge about them more and more formidable.
                        (化学英語30講、第13講より)

一見複雑な文ですが、動詞は made 1つのみ。

The rapid increase in the number of known organic compounds during the nineteenth century made the problem of keeping up with knowledge about them more and more formidable.

そこで made の前までが主語に相当する部分とわかります。
The rapid increase in the number of known organic compounds during the nineteenth century

主語は the increase (増加)で、残りは飾りです。
rapid(急速な)、in the number of (数の)known organic compounds(既知の有機化合物), during the nineteenth century(19世紀における)

madeの後には動詞の目的語に相当するthe problem (問題)、目的格補語に相当する more and more  formidable (ますます困難に)が続き、のこりは飾りです。of keeping up with knowledge about them(これらに関する知識を常に最新に維持する)

つまりこの文は S + V + O + C の第五文型 なのです。

訳文:19世紀になると既知の有機化合物の数が急速に増加し、これらに関する知識を常に最新に維持するのが、ますます困難になった。

このように、長い文ではまず動詞(V)に注目し、動詞の前までが主語(S)と見抜きましょう。動詞の後に補語(C)や目的語(O)が続きますが、結局のところ、英語の文の構造はたった5種類しかないのです。

S+V
S+V+C
S+V+O
S + V + O + O
S + V + O + C

2020年5月2日土曜日

冠詞の話:a と the の違い(その2)

a と the の違いについては以前にも「I am the researcherと名乗る時」で解説しました。
きょうお送りする(その2)はマジックに登場する卵を例にお話します。それでは、音声でお聞きください。
(音声が再生できないかたは、このページ下のテキストをご覧ください。)



音声を聞く






























解答 最初の「Oh, here is (     ) carrot.」の空欄には「a 」が次の「Oh, here is (     ) carrot.」の空欄には「the」が入ります。最初のニンジンは初めて出会った見知らぬニンジンだから不定冠詞が、次のニンジンはどこかで落としてしまいあなたが探していた(特定された)ニンジンだから定冠詞がつくのですね。



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宮本惠子です。今日は冠詞の「a」と「the」の違いについて考えてみたいと思います。

さて、皆さんの目の前に今一人のマジシャンが立っています。白い卵を1つ私たちに見せながら彼は言います「ここに卵があります」。次に彼がそれを空中高く放り投げると、あれ?卵は消えてしまいました。両手を組み、しばらく考えているマジシャン。ふと右のそで口を私たちの方に向けると、そこには何か白いものがのぞいています。おもむろに取り出した卵を見せながら彼は言います「卵はここにありました」。

それではマジシャンのセリフを英語にしてみましょう。

最初のセリフ「ここに卵があります。」これは「Here is an egg.」ですね。なんの変哲も無いただの卵。初めて登場した卵なので不定冠詞の「an」がつきます。 

最後のセリフ「たまごはここにありました。」これは「Here is the egg.」このたまごは皆が知っている例の消えた卵です。だから定冠詞「the」がつくのです。


a と the の違いってこういうことなんですね。何の変哲も無いただの卵は不定冠詞の「an」。たくさんあるもののうちの一つ。ということ。一方、たった一つだけの特別な存在、これを特定されている、と言いますが、そういう名詞には定冠詞がつくのです。

では、最後に問題を解いてみてください。

道をあるいていると、人参が一本落ちていました。なんでこんなところに人参が落ちているの?と訝しがりながら、あなたが言う一言。

「Oh, here is (     ) carrot.」

市場から帰ると、買い物かごから人参が一本消えていました。帰り道のどこかで落としてしまったようです。探していると、ようやく見つかりました。ほっとしたあなたが言う一言。

「Oh, here is (     ) carrot.」


解答はこのページの下に載せてあります。

これで a と the の違い(その2)を終わります。

2018年12月5日水曜日

物質名詞が普通名詞になるとき

以前このブログで抽象名詞が普通名詞として使われる場合(Temperature(温度)に冠詞はつくの?)を解説しました.

今日は物質名詞が普通名詞になるというお話.

コーヒーに入れる砂糖(sugar) は日常生活では物質名詞として使われていて無冠詞です.

例えば,

「私はお茶に砂糖を入れる.」は

「I put sugar in my tea.」ですね.

このように日常生活ではもっぱら「砂糖(ショ糖)」として使われるている「sugar」ですが,科学の分野では「糖(saccharide)」の意味で使われることがあり,その場合は普通名詞になるのです.つまり,不定冠詞の「a」がつくし,複数にもなります.

例えば,

「ブドウ糖や果糖,ガラクトースは単糖である」は

「Glucose, fructose and galactose are simple sugars.」 となります.

2018年11月29日配信の「Scientific American Daily Digest」に「The Biology of Sugars Points to a Sweet Strategy for Treating Cancerという記事が載っていました.

ここでは「sugar」が複数になっていますね.何種類かの糖ということを示しています.
また「sweet」には甘い,という意味の他に「素敵な,素晴らしい」という意味があり,「sugar」が甘いこと,にかけたお洒落なタイトルになっています.

糖類の研究から素晴らしい癌の治療法が見えてきた,というわけですね. 


===================================  KM 
「物質名詞や抽象名詞が可算名詞になるとき」は化学英語30講の16講(p85) で解説しています.

2018年8月18日土曜日

英語で元素を正しく発音したい方へ

元素記号は1814年にベルセリウスが考案したものに基づき,ラテン語の1,2文字をとって作られました.

ただ,実際のところ,そのほとんどは英語名の最初の1,2文字と同じです.例外は
Na(ナトリウム,英語名はsodium),K(カリウム,英語名はpotassium),Pb(鉛,英語名はlead(発音はリードではなくてレッド),Cu(銅,英語名はcopper),W(タングステン,英語名はtungsten),Fe(鉄,英語名はiron)などです.(化学英語30講p31 ~ p32)

化学英語を聞き取るための第一歩は正しい発音を知ること.
例えば「水素」は「hydrogen」ですが,「ハイドロゲン」ではありません.「ハイドルジェン」と発音します.

ハロゲンも間違いで,ハロジェンが正しいのです.

そんなわけで,元素の発音は意外に難しいのですが,元素は何と言っても化学の基本です.

と思っていたら,周期表を見ながら元素の発音を聞くことのできるビデオがYouTubeにアップロードされていたのでご紹介します.

ぜひご自分でも声を出して,練習してみてください.

YouTubeのビデオを見る


2017年11月16日木曜日

生じた沈殿は a resulting precipitate? それとも a resulted precipitate?

動詞から作る形容詞には2種類あります.

1)動詞の現在分詞形を使うもの,と
2)過去分詞形を使うもの,です.

1)の例を挙げると a reducing agent (還元剤)
2)の例を挙げると the shown figure (示されている図)

では,どんな時に現在分詞形(~ing)を用いるかというと,文章にした時に,修飾されている名詞が動詞の主語である場合です.

1)の例を文章にすると An agent reduces.(薬品は還元する.)
  ここで,agentは動詞reduceの主語になっています.


一方,過去分詞形(~ed)を用いるのは,文章にした時にも動詞が過去分詞形で使われる場合です.

2)の例を文章にすると the figure is shown (図が示される.)となり,showという動詞は過去分詞形で使われています.

 この場合は修飾されている名詞 figureが動詞 showの目的語になっているとも言えます.

 I show the figure. → the figure is shown (by me)

それでは「生じた沈殿」は英語でどう言えば良いでしょう?
まず「沈殿(precipitate)が生じる(result)」という文を作ってから考えてください.




















沈殿(precipitate)が生じる(result)は「A precipitate results.」ですね.

さて,ここでprecipitateresultsの主語になっているので,

正解は「A resulting precipitate」となります.

参考:「化学英語30講」より第17講 動詞から作る形容詞


2017年11月13日月曜日

自動詞から受け身は作れない

化学英語では「受け身の表現が多用される」ということはご存知ですか?

例えば「化合物Aを合成した」という文章は

「I synthesized Compound A.」と書くよりは

「Compound A was synthesized.」とする方が自然です.

なぜか? ここで重要な情報としては「化合物Aができた」ということであって「誰が」合成したかはどうでも良いから.

明瞭(clear)で正確(correct)で簡潔(concise)であることが求められる化学英語は内容が明瞭かつ正確に伝わる限り,短い方が良いのです.

日本語では「私」を省いて「化合物Aを合成した」という文章を作ることができますが,英語では主語「I」を省けないので,物質を主語とした受け身が使われるわけです.

ところで「化学英語では受け身の表現が多用される」ということに慣れてきた方にとっての思いがけない落とし穴が「自動詞を受け身にしてしまうパターン」

それではここで質問です.
「中和反応が起こった」の英訳は次のどちらが正しいでしょうか?

A. A neutralization reaction was occurred.

B. A neutralization reaction occurred.





















答え Bの「A neutralization reaction occurred.」が正しい.occurは自動詞なので,受け身を作ることはできません.


参考)「化学英語30講」73ページ